短期カウンセリングのすすめ

短期間での解決を目指すブリーフ・セラピーのなかのナラティヴ・セラピーを中心にご紹介します

ナラティヴ・セラピーとカウンセリングの実際

お知らせ 2019年台風19号、北海道地震、東日本大震災の被災者及びご家族、お知り合いに被災者のいらっしゃる方のためにボランティアによる無料の電話によるこころのカウンセリングを行っております。24時間受け付けております。ご利用ください。℡03-5888-7354です。


現在ナラティヴ・セラピーはカウンセリングに2方向で取り入れられています。一つは補助的にナラティヴ・セラピーを用いる方法、もう一つはナラティヴ・セラピーを中心に置いたカウンセリングです。


前者として精神分析療法を考えてみます。フロイドはギリシャのエディプスの物語から学説を作り上げます。この学説にそって、精神分析療法を進めます。当然ながら、学問は進歩するもの。現在ではこのギリシャのエディプスの物語を、児童虐待の物語と読み解く学者もいます。ナラティヴ・セラピーではこの解釈的な方向はあまり評価していません。河合俊雄先生は精神分析療法の本質を、「転移」に有ると論じています。ナラティヴ・セラピーではこの転移的な方向は評価されています。


解釈的な方向はあまり評価されないのでしょうか?解釈的な方向は、精神分析家の見立てた物語になるからです。ナラティヴ・セラピーは語りに、いのちを吹き込みます。精神分析家の見立てた物語は、ナラティヴ・セラピーからいのちを奪ってしまいます。それでも精神分析療法が、自分の人生を物語る場を与えたことは評価されなければいけません。


自分の人生を物語る場を与えられた人は、感情をともない自分を語っていきます。この感情体験を中心に、ジェンドリンは体験過程療法を確立しました。それはクライエントの体験過程に、焦点を当てたものです。フォーカシングと呼ばれます。精神分析療法では、話の内容に軸足が置かれていました。だが体験過程では精神分析療法で見逃されていた、感情体験を追っていくのです。


ジェンドリンはロジャーズの後継者です。ロジャーズと同様に、自己概念に焦点を当てます。自己概念、「自分はどういう人間か」という事です。当然ながらこの自己概念、「自分はどういう人間か」という事に関しては物語る事、ナラティヴは必要です。さらに体験過程にもナラティヴは必要です。自己概念も体験過程もナラティヴによってまとめ上げられるからです。自分自身の物語として、自己概念も体験過程も与えられたものです。


この自分自身を物語としてまとめ上げ、物語る時に一定のパターンがあります。典型的なものは、ヒーローの物語です。現代社会には、英雄物語が無数にあります。ヒーローやヒロインになりたいのです。ヒーローやヒロインが行動規範になります。またはフロイドはギリシャのエディプスの物語のような問題提起です。どちらであっても、生きるためのガイドになります。


ただしこころの問題の改善には、あまり意味がありません。カウンセリングでの相談者の語りは、本当は多層的です。それをカウンセラーの作った自分の物語に、単層化しているとも言えます。単層化されたものは、多層的なものをとらえきれません。カウンセラーにより仕立て上げられた物語になってしまう可能性もあります。


ナラティヴにより自分自身の物語として、自己概念も体験過程も再形成されます。そのときに特に強調されなければいけないのは、感情の問題です。神経症傾向のある人は、気後れや罪悪感に苦しみがちです。それはナラティヴにより改められます。ナラティヴとはナラティヴによる語りです。


精神分析療法から対人関係の問題は、取り入れられるべきものです。それはクライエントが無意識的に行ってしまう役割であり、それに伴い他者に求める相補的な役割です。多くの神経症やノイローゼの人は受け身の姿勢を取りがちです。


他者に対するイメージが、その姿勢には潜んでいます。それは「拒絶される」であり「受け入れられない」です。そうやって他者を遠ざけてもいるのです。この悪循環は、その人にとって習慣化されています。


この人はこの物語を自分に語り、生きています。さらには他者にも語り、生きています。神経症の人はそれにより、自己増殖的悪循環に入りがちです。よってカウンセリングの目的は、新しい語りの構築です。このような一本の線に、人生の語りを位置付けていくことはとても分かりやすいものです。単一解が与えられるからです。


現在では精神分析療法のような長期の心理療法よりも、短期のブリーフセラピーが広まっています。その短期のブリーフセラピーは、この単一解を追求するものです。ただし精神分析療法のような長期の心理療法から、その人の人生の語りの全体像が把握されないという批判もあります。さらにはブリーフセラピーでは、カウンセリングの初期で単一解の見つからない人はカウンセリングが進めにくいということもあります。


なお精神分析療法のような長期の心理療法も、短期のブリーフセラピーも問題に焦点を当てたモデルです。この焦点化に異議を唱えるのが、解決に焦点を当てたモデルです。この解決に焦点を当てたモデルでは、カウンセラーをコンサルタントと呼びます。


コンサルタントは困難の解決の方法を、提示します。それに従い、相談者は解決を進めます。いまの困難に対する代案を提示するような、切っ掛けとなる方法をコンサルタントは
持っているのです。この様にしてコンサルタントは、問題解決をサポートします。


常に問題にフォーカスします。人によっては、場当たり的な印象を受けます。だが問題にフォーカスすることも浮かび上がっても来ます。常に問題を離れない、問題解決です。


さらに述べます。